
TIG溶接 角パイプ溶接実演
ドリルやサンダー等は、結構持っていたり使った事があったりする人が多いと思いますが、溶接となると、なかなか触れる機会が少ないのではないでしょうか?
自分で塗装などをやった経験のある人なら判ると思うのですが、スプレー缶などで塗る作業よりも、下地作りや仕上げ作業の方が手間隙がかかり、これをいい加減にすると仕上がりに反映されます。
溶接にも同じ事が言えて、溶接作業自体はそれ程難しいものではなく、その前後の過程で製品の良し悪しが決まります。
角パイプ溶接は難しい物ではないのですが、何も考えずにただ溶接していくと、必ず熱による歪が発生する為、思い通りの仕上がりになりません。
板厚2mm、一辺が40mmの角パイプを”山”の字に組んで溶接します。
材質は鉄です。
ココでは、TIG(アルゴン)溶接で行ないますが、アーク溶接でも基本は同じです。
まず、定盤の上でスコヤーで90度を出して仮止めしていきます。
今回は、角パイプですので4箇所、パチパチと点溶接でとめていきます。
仮止めしたら、スコヤー等、平面が出ている物で、段差や角度が狂っていないか見て、この段階で狂いを修正していきます。
これは、普通に”なめ付け”したものです。
角パイプの角には、Rがついているので、ただ溶接してしまうと写真のように凹んでしまいます。
そこで、溶棒を注しながら溶接していきます。
アルミ溶接などに、よく見られるうろこ状の溶接痕が盛り上がっているのが判るでしょうか?
これが出来ないと、アルミ溶接は出来ません。
(プロの職人さんがやると、それはもう見事なウロコが出来ます)
内側を溶接すると、必ず歪みが発生します。
そこで、最初から歪み分を計算に入れて”逆歪み”を行い、溶接していきます。
中央に4mmのアルミ片を挟んで、両端をシャコ万で抑えて”逆歪み”状態にします。
片側から、一気に溶接をしてしまうと、”回転変形”してしまうので、外側から内側へ半分、溶接していきます。
反対側からも、外側から内側へ溶接します。
こうすれば、”回転変形”を最小限に、抑えることが出来ます。
今回は、板厚が2mmなので”なめ付け”にしましたが、板厚がある時は、溶棒を注すと強度が出ます。
全ての溶接が終わりましたが、これで、終わりではありません。
スコヤーを当てて90度を見てみると、本溶接前に90度を出していたにもかかわらず内側に傾いているのが判るでしょうか?
これが溶接で発生する”歪み”です。
歪み取りには、色々な方法が在りますが今回は、無反動(プラハン)で、叩いて直す”ハンマリング”で直します。
薄い角パイプなので、変形しない様に角を狙って修正していきます。
スコヤーで、90度を見ながら少しずつ修正していって最後に、底辺の長さと、上の長さが揃えば歪み取りは完了です。
最後は、サンダーを使って仕上げます。
サンダーは、出来るだけ寝かして刃全体を使うようにして、削っていきます。
あまり一気に、削らないで最初は盛り上がっている所を、削っていきます。
サンダーは、刃先でチョコチョコやらず腕全体を動かして使うと、上手く綺麗に削れます。
サンダーだけでも、ここまで仕上げる事が、出来ます。
これで完成です。
溶接よりも、その前後の工程の方が大事なのが判っていただけたでしょうか?
今回の溶接は最小電圧で行なったのですが、それでもかなりの歪みが発生しました。
これを考えると、バイクのフレームへの安易な溶接行為がどれほど危険か判ると思います。
オフ車の場合は、多少フレームが捩れていても結構、走れてしまうのですが、ロードの場合かなりの影響が出ると思います。
ショップなどに、フレーム補強などで溶接してもらう場合など、参考にしてもらえれば幸いです。
酷い所だと、ガス溶接されてフレームが使い物に成らなくなったなんて話も実際にあります。
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